評価しない

善し悪しがない、記録とか備忘録とかそういうやつ

ベース練習日記-一念発起〜失意編

私は高校生の時からベースをやりたかった。

学生までは時間はあったけどお金がなかったし、社会人になってからはお金はあるけど時間がなかった。

どんな曲を聴いてもベースばかり追いかけて、右手の人差し指と中指でリズムを模倣する遊びを10年やって気を紛らわせていた。

そうやって誤魔化してきた"ベースやりたい欲"が、ある曲を聴いた途端にとうとう我慢できなくなってしまった。

天野月子「人形」

人形

人形

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大学生の頃、知り合いのセッションに参加して、シンセサイザーでコピーをした、思い出深い曲だった。急に懐かしくなって一度聴いた途端、もうなにがなんでもベースをやらなければならない気持ちが湧いて出た。

この曲の、このベースを弾きたい!という欲はついに私を駆り立て、10年間ぐだぐだと理由をつけてやらなかったベースを始めることにした。

 

手始めに、ベースを教えてくれるという音楽教室の体験に行った。

素直に天野月子の人形を弾きたいです、と言ったら、Aメロの最初のフレーズを教えてくれた。(後日自分で耳コピをしたら教えてもらったコードと違っていて、後述する私の傲慢さに拍車がかかることになる)

私は小学生までピアノを習ったり、高校生の時はギターをやったり、17才から21才くらいまで、社会人バンドでシンセサイザーをやったりして遊んでいたことがある。

その経歴を聞いた講師先生殿は、私が弦をべ〜んと鳴らすだけで「goooood!」とELTの先生のように褒めてくれた。「やはり楽器やってた人は飲み込みが早いですよ!」と言う彼の言葉を鵜呑みにした私は天狗になり、じゃあ別にわざわざ習わなくても私なら独学でいけるな…と判断して体験時即入校キャンペーンを粛々と断った。やる気に満ちていたけど、毎月20,000円近いお月謝を出すことをまだ渋っていたのだった。

 

そして、自分が後戻りできないようにベースをやりますとツイッターで宣言したら、8年くらい付き合いのあるフォロワーがベースを譲ってくれることになった。はるばる京都から東京に2,950円でやってきたそのベースは、碧色のような縹色のようなきれいな色をしていた。

楽器に名前をつける派閥の私は「洛藍藻 孔雀明王(らくらんそう くじゃくみょうおう)」と命名した。厨二病がまだ抜けていないのだ。

 

ベースが届いたならそのメンテナンスをしなければなるまい。実にやる気がある私は、洛藍藻の掃除と弦の張替えを自力でやることを決め、早速楽器屋に行った。

山野楽器もヤマハもある銀座に赴いたが、高級な街には高級な人間が高級な楽器を弾くのか、主にクラシックの系統に明るい店だった。バンドをやる人間は銀座よりも御茶ノ水に行くことを忘れていた私は、ヤマハのお兄さんに一通りベースの弦の張り方やメンテナンスについて聞いて、880円のボディクリーナーとなんか一番定番って言われたダダリオの弦だけ買った。「もし上手く弦を張れなかったら代わりに張るから持ってきてください」と兄さんが言ってくれた。もちろん初めから自分でやるつもりだったけど、もし万が一ダメだった場合の保険ができて安心感が生まれた。やさしいお兄さんだった。

次は私が大好きな島村楽器に行こうとしたけれど、銀座には店舗がなく、錦糸町に向かった。本当は銀座で全て揃えるはずだったが、計画性がない。

島村楽器ではギタースタンド、VOXのイヤホンアンプ、フレットバター(フレットを掃除するやつ)を買った。

次に100均で、有線のイヤホンとそれを変換する端子を2個くらい買った。というのも、私が使用するiPhone7にはイヤホン端子が無い。イヤホン端子→Lightningが一番良かったけど100均には無いようだった。無知な私はイヤホン端子→USB Type-C→Lightningにする変換コードを買ったのだ。家に帰ったら案の定なーんにも反応しない。仕方ないからiPhone耳コピするんじゃなく、めちゃくちゃ古いiPadを使用することにした。

さらに弦を切る用のニッパーを買ったと思ったらラジオペンチだった。ベースの一番太い弦を切ろうとしただけでラジオペンチは刃こぼれした。無知の極みだった。

 

この日の私の買い物は、合計12,772円。洛藍藻の着払い料金と合わせて15,722円。

ベースを弾く環境に持っていくまでの総額が15,722円はあまりにも安い。やはりベースを購入していないということが大きいと思う。洛藍藻を譲ってくれたフォロワーに足を向けて眠れなくなった。

 

翌日、私はわくわくしながら洛藍藻の弦を外し、ボディを掃除した。ネックにフレットバターを塗り、ひたすら激しく擦った。黒い汚れがもう出てこないくらいにやらなきゃいけないらしく、30分くらい私はフレットをティッシュでこそぎ落としていた。早くも後悔の念が込み上げてきそうだったが、今回だけやればしばらくやらなくて済むようにと綿棒など使ってフレットの隙間までもを擦りまくった。

疲労困憊している体に鞭打ち、ラジオペンチの刃こぼれと戦いながら、無事弦を張り替えた時の達成感たるや。

あとはもうチューニングして早速天野月子の人形をコピーして遊ぶだけだ!と意気込んでいた。

しかしいざ耳コピしようとしても、ベースのどこを鳴らしたらどの音が出るのか分からない。そのため、私は全部の音をいったん出して、コードに合う音を探し当てるという戦車戦術を余儀なくされた。分かったのは、体験教室の講師先生殿が教えてくれたコードは違うということだけ。

さらに、私はどうやら変な癖がついてるようだった。右手の人差し指から弦を弾かなきゃいけないらしいが、どうしても中指から動いてしまう。さらに弦の移動をする時に同じ指で2回弾いてしまう。これは、いつかベースをやった時のために備えていた右手の人差し指と中指でリズムを取るアレが邪魔をしていた。少し絶望した。

左手の指は弦を押さえて音を鳴らした途端にピーン!とフレットから離れていくし、小指にそもそも力がなくてへにょょょ〜んという曖昧で間抜けな音が出る。クロマチックというひとつずつ確実に音を出す練習をし始めたが、要改善点が多いだろうと思いつつ正しさも間違いも分からない状態だ。

 

私は早くも、体験教室の入校を断ったことを後悔し始めようとしている。

次回は銀座のベースレッスン体験に行き尽くす編にしたい。